作家へのインタビュー&イラスト・ギャラリー Special Stage 01 紫のあ [季刊エス 65号 2019 Mar]
Profile: 主に、女の子から女性まで様々な百合を描き、繊細な心の揺れを美しく儚く紡ぐ。透明感を感じる着彩は、女の子たちの世界をさらに幻想的に演出する。コミティア126でイベントデビューし、そこで初の漫画を出す。普段はTwitterやpixivなどのSNSを通して作品発表をしている。
Twitter ID=@sinoa_ster Pixiv ID=16939390
Gallery

『来週、雨が降ったら』カバーイラスト
Story『来週、雨が降ったら』
ある駅で雨宿りをしていた「お姉さん」。突然の雷に驚き振り向くと、ひとりの黒髪の女の子、「彼女」がいた。よく笑いながらもミステリアスな雰囲気を持つ「彼女」から、半年後に結婚を控えた「お姉さん」が傘を借りるところから物語は始まる――。
Panel Commentary 1

最初の右ページでは、横顔のお姉さんの指に指輪がはめられているのがわかり、次のページではその手を包み込み指輪が見えなくなる見開きならではの演出。お姉さんと黒髪の子の関係性にドキリとさせられる。
Panel Commentary 2

すれ違う2人の思いを描いたシーン。それぞれの場所で、お互いを想い合うシーンが、背中合わせの構図によって一層伝わってくる。
Panel Commentary 3

黒髪の表現が印象的。細やかに線を重ねることで、女性らしい美しい髪を演出している。
紫陽花

「来週、雨が降ったら」の元となった作品。雨に濡れてしっとりとした髪や、白く透き通るような肌に映える頬のほんのりとした血色や唇の色が艶っぽい。
「お姫と人魚姫のお話」表紙イラスト

Twitterで発表したお姫様と人魚姫の漫画。童話のようなストーリー展開がドラマチックで一途な人魚姫の姿が美しく、お姫様の優しさが切ない物語である。彼女たちの特別な一瞬を切り取ったかのような表情が忘れられなくなる。
花園にて

真っ白な羽、真っ白な衣装を身にまとった少女たちが手にした禁断の果実。手を握っている女の子たちからそれぞれ物語を感じる一枚。
eyes

手を握り、体を寄せ合う2人。柔らかな光と風の演出から、彼女たちがいる場所や関係性を感じる。透け感のある服の表現、言いたげな二人の表情がグッとくる。
ひまわり

三枚の絵で一つの物語が紡がれているイラスト。麦わら帽子が風に飛ばされ、その奥には眩しいほど綺麗な光に包まれた少女。こちらを見つめてくる瞳に切なさが湧き上がる。
Interview
――コミティア126で出版した「来週、雨が降ったら」(以下、「雨が降ったら」)について伺えたらと思います。まずは登場する二人のキャラクター像について教えてください。
紫のあ:本作に登場する二人は、私が創作を始めたときに最初に描いたキャラクターで、私の好みを詰め込んだ理想の二人、といった感じです。普段から、イラストを描きながら、その人物の設定や性格、関係について想像するのが好きなので、この二人についても、いろいろなイラストを描きながらキャラクター像を固めていきました。また、私は放っておくとすぐ暗い話にしてしまうので、「この二人は絶対にハッピーエンドにする!」ということを第一に設定を考えました。
――そうだったんですね。では次に「雨が降ったら」がどのようにして作られたのかをお聞かせください。
紫のあ: 最初は「紫陽花」のイラストを描いているときに、これはどんなシチュエーションなのか、考えていたのがきっかけです。この時点では結婚式が間近の花嫁と、駆け落ちする女の子の話だったと思います。そこから〈雨〉〈紫陽花〉〈結婚〉といった要素を残して、話を作るなら何かモチーフがあった方が展開が考えやすいと思ったので、〈傘〉を二人の関係を繋ぐ中心になるものと設定して、話を広げていきました。
――二人の関係性を描く上で、どのようなことに気をつけましたか?
紫のあ:中盤や後半の盛り上がる場面で登場人物二人の心情を理解してもらうには、序盤の、二人が出会って、全くの初対面から関係を築いていく様子を丁寧に描写することが大事だと思いました。なので、二人が出会ってから、どのくらいの時間が経っていて、その間に二人の関係がどのように変化したのか、二人の口調や態度などから読んでる人に伝えられるよう意識していました。
――確かに伝わってきました! 次に、紫のあさんがご自身で描く上で好きなキャラクター像、キャラクターの関係性についてお聞かせください。
紫のあ: 物語の中だと、いつも笑顔で自由な、どこかに行ってしまいそうな雰囲気のある子が好きです。「雨が降ったら」の話だと黒髪の子の方がそんな感じです。主人公が別にいる場合でも、話の中心は大体そういう子で、その子に対して相手や周りの子がどう変化して、どんな感情を持つのかを考えるのが好きです。外見については、中性的より女性的、髪も短いより長いのほうが好きです。一番気に入っているキャラクターは、やはり理想を詰め込んでいるだけあって、「雨が降ったら」で描いている黒髪の子だと思います。
――漫画の描き方について具体的にお聞きしたいです。紫のあさんの描かれる黒髪は完全な黒ベタではなく、細やかな線を重ねて白い部分も残しつつ表現しているのが印象的です。黒髪を線で表現する魅力や理由を教えてください。
紫のあ:私は漫画をデジタルで描いているのですが、アナログっぽい表現が好きなので、トーンを使うよりも線で描く方がアナログのような雰囲気が出ると思ったことが一つです。髪は一番描くのが好きな部位なので、特に美しく見えるように細かく描きました。あとは単純に、トーンを使う技術がまだ拙く思うようにできなかったので、なるべくトーンを使わなくても済むようにというのが一つです。正直これが一番の理由だと思います。
――物語や関係性が浮かび上がってくるような、幻想的でロマンチックなカラーイラストが魅力的だと感じています。紫のあさんがイラストを描く上で気をつけていることや意識していることをお聞かせください!
紫のあ:全体的に、彩度が低くて淡く光りがあったような色合いが好きで、幻想的だったりノスタルジックな雰囲気が感じられる絵に魅力を感じます。初めてそういった魅力の中の空気感を意識したのは「eyes」です。あまり、絵について勉強をしてこなかったので、空気感や雰囲気をどういった曖昧な表現になるのですが、それ以降、「ひまわり」や「花園にて」のような物語性のあるイラストを描く際には一枚の写真のようにイメージし、空気感を意識するようになりました。
――今後、絵の活動をするうえでやってみたいこと、描きたい題材をお聞かせください。そして告知できることなどがありましたら教えてください。
紫のあ: 絵に関しても、漫画に関しても、まだまだ勉強中ではありますが、イベントなどに参加しつつ作品をたくさんの人に見ていただきたく思います。同人誌だと、漫画だけでなくイラスト集もいつか出してみたいです。題材は、海や草花に関するお話を描いたので、次は空に関する物語が描きたいです。