キャラクターデザインインタビュー

堀口悠紀子

可愛らしさの中に女子高生の生っぽいリアリティを内包する魅力的なキャラクターたちをデザインした堀口さん。第2期ではクラスメイト全員のデザインを起こし、作品世界の横築にも関わった堀口さんにお話をうかがった。

試行錯誤の結果、たどりついた
キャラクターデザイン

———原作の印象について教えてください。
凄く癖が強いわけでもなく、だからといって弱いわけでもなく、女の子でも読みやすい漫画になっているなぁと感じました。絵も可愛くてキャラクターひとりひとりにしっかりとした個性がついているので、とても入りやすかったです。最初はムギの太い眉毛に 釘付けになりました(笑)。なんだか『けいおん!』と出会ったことが、もうずいぶん昔のことのようです。もうすっかり馴染んじゃってます。

———キャラクターデザインについて山田監督とはどのようなお話をされましたか?また、堀口さんから提案された要素はありますか?
とにかく監督からは「漫画ではあるけど他にしっかり足をつけたい」ということで、最初はキャラの等身を低みにしていたのですが、試行錯誤の結果、すこし生っぽくした今のデザインに落ち着いた感じです。私のほうからは、デザインとはまた違うのですが、目の中にしっかり黒色を入れたい、髪の色を深くしたいなど、ちょこちょこと細かい提案を出したりしていました。

———堀口さんから見て山田監督はどのような印象ですか?
すごく身近で楽しい監督だと思います。自分のやりたいことをしっかりと持っていながらも、スタッフにも楽しんで作品を作って欲しいと考えていらっしゃるので、相手の話に耳を傾けることを忘れません。謙虚です。そして、作品やキャラクターに対しては、母親のように深い愛情をもって大事に見守っている感じです。多分過保護すぎる面も?(笑)監督の作品の特徴は、やっぱりポップで楽しい、ちょこっとレトロ。そして、どこがどうというわけでもないのですが、全体をみたときになんともいえないノスタルジックな印象を受けるところが最大の魅力だと思います

リアルな髪色が表現する
作品の優しい雰囲気

———「けいおん!」のキャラクターデザインをする際に、留意されたポイントはどこでしょうか?
全部です・・・・・・!全体的に言うと、身近でとっつきやすい雰囲気と女の子らしい柔らかさを意識してデザインとしています。

———キャラクターのプロポーションを、現実の女子高生らしいアルなプロポーションにした理由な何でしょうか?
原作もそうなのですが、プロポーションはいたって普通なんですね。体重も決して軽いわけではなくて、むしろ漫画のわりには重い?(笑)監督もそこは活かしたいということで、『けいおん!』のキャラクターは足もそんなに細くないですし、長いわけでもないです。どういう経緯かは忘れましたが、足の形や体型もキャラクターごとに違ったりします。

———黒・茶色系統のリアルな髪色が多いですが、描き分けがしづらかったりはしませんでしたか?
たしかに突飛な髪色のキャラクターはいないので、髪色によるキャラクターの区別には頼れない感じではありましたが、むしろそれが『けいおん!』にとっては良かったかなと思います。だからこそ表現できる優しい雰囲気があるというか、桜高の校舎のデザインや色味にもよく合っていたと思います。『けいおん!』特有のレトロ感はそのあたりから出ているのではないかと。

———『けいおん!』の髪に、あまりハイライトを入れないようにしようと提案されたのは堀口さんだそうですが、なぜこのような提案をされたのですか?
・・・・・・なぜでしょう(笑)。多分、ハイライトをつけないことによるモサモサ感(?)が欲しかったのかもしれません。つやつやし過ぎないというか・・・。あとは、普通にやってみたかったというのもあります。それに、原作も基本的にハイライトはついてないですし、これだ!と思ったのかもしれません。とはいえ、絶対ハイライトを付けちゃダメ!ではないのでシーンごとに使いわけたり、各話作監さんの好みにも任せました。

———『けいおん!』は女の子の物語だけに、みんな色々な私服を着ていますが、私服のデザインも堀口さんが担当されていたのでしょうか?
作品的に大事なデザインになるものは、監督が選別して私がデザインさせてもらうのですが、基本的にその話数の私服はその話数の担当作監さんがデザインされています。個人的にこだわったのはやはり唯でしょうか。どこか芋くさいというか、ちょっと変てこりんなデザインというか。監督も言っていましたが、唯本人は可愛いと思っているのだけど、周りから見たらちょっと変みたいな・・・・・・。ちなみに唯の文字Tシャツは監督が是非やりたいと提案したものです。監督はとにかくちょっとダサいのが好きです(笑)。ちなみに私は、幸か不幸か狙わなくても若干ダサいデザインになってしまうので、監督によく褒められます。

———キャラクターの表情や仕草が非常に細かく描かれている印象がありますが、仕草や表情の指定や提案はどのようにされましたか?
『けいおん!』という作品にとって、キャラの仕草や表情というものはかなり重要な鍵になっているなと思います。どのタイミングでどのシーンに、どんな表情ポーズを持って来るのか。そのチョイスでだいぶ作品の面白さが変わってくると思うので、常に頭の中はフル回転でした。監督はそれらのチョイスが特に上手い方なので、できるだけそれを読み取りながら作業したつもりです。アニメなので、当然ひとつひとつの動作は実際よりも誇張されますが、嘘くさいものにはしたくなかったので、そのあたりも総作監時に気をつけました。

———キャラクターをデザインする際に、ご自身の体験や学生時代の出来事が活かされている部分がありましたら教えてください。
私の通っていた学校はブレザーではなかったので、ブレザーの感覚があまり分からなくて苦労しました。とりあえず、少女性みたいなものを大事にしたかったので、どこがどうというわけではないのですが常に学生時代の感覚というか、空気みたいなものを思い返しながらデザインをするようにしていました。

キャラクターの理解が深まると
キャラクターの描き方も変化する

———第1期と第2期でキャラクターデザインが変化した点はありますか?また、第2期になって追加したキャラ表はありますか?

いろんな方から言われるのが、第2期になって、ちちょっとデザインが大人びたのではないかということです。自分では意識していないのですが、やはりキャラクターとの付き合いも長くなってくると、キャラの掘り下げや理解も深くなってくるので、自然とそうなるのかなと思います。第1期の1話はまさに「はじめまして」という気分で作業していたので、やっぱりその時にしか出せない初々しさがありますし、今は今にしか出せない微妙な雰囲気もあったりするんだと思います。第2期が決まった当初、ムギの設定を描きなおそうかという話が出ていたのですが(彼女が一番変化したと思うので)、実作業に追われているうちにあっという間に最終回になってしまいました(笑)。

———第2期でクラスメイトがたくさん登場しましたが、クラスメイトはどのようにネタ出しをされたのですか?
マンネリ化を防ぐために、第1期と違い第2期は教室でのシーンも増えるという事で、監督から「クラスメイトの設定もらえますか?」といわれた時は、「やったっ!」と思いました。基本的に人の設定を考えるのは好きなので、クラスメイトのデザインはとても楽しい作業でした。明るい性格の子からちょっと暗めな子まで、一通り揃っています。中には、過去の同級生や会社のスタッフの人をこっそりモデルにした子もいます。名前は吉田さんが作ってくださった名簿を見ながら、私と監督でキャラごとに当てはめていきました。性格付けは、モブにしてはかなり緻密に考えてありますよ(私と監督の頭の中で)。

身近でとっつきやすい雰囲気と女の子らしい柔らかさを意識してデザインしています

———描きやすいキャラクター、逆に描くのが難しいキャラクターはいますか?
全員描きやすくもあるし、描きにくくもあります。最近版権をやっていて監督に言われるのが、昔は「堀口さんの梓はぶれないですね」と言われていたのに、最近は「堀口さんの枠がちょっと違う」と言われたり(笑)。キャラごとにスランプみたいなものが来るのかもしれません。
印象に残った話数・シーンを教えてください。第1期で言うとやっぱり第1話!あの新鮮な感覚は忘れられません。第2期でいうと、どれも印象的ではあるのですが、1話、2話、3話、そして20話から番外編2にかけての流れが好きです。シーンは3話の梓と唯の「私ドラムやろうかな」のくだり。あの最後の梓には胸を打ち抜かれました(笑)。あとは、番外編2のラストシーンなど、ほかにもたくさんあります。

———ご自分が作画監督を担当された話数(1話、16話、最終回)の作画的な見どころ、注目点を教えてください。

●1話
まずはアバン。唯のギターの音と、第2期が始まるんだという感じが良く出ていて、わくわくしますよね。校歌をバックに桜を唯が拾う所も好きです。アバンのシーンも含め、監督の少女性へのこだわりが表れていると思います。あと、唯と桜の組み合わせも好きなので・・・。あとは、部活巡りの一連が楽しいのでお気に入りです。

●16話
実は第1期から何度か似た葛藤を繰り返している梓なだけに、今更感が出てしまわないように演出さんと丁寧に話をつめた覚えがあります。16話は梓の百面相っぷりが見所です。あとトイレから出てきた所で出くわしてしまって微妙な表情の思春期聡などなど(笑)。思わずテンションの上がるおいしそうなケーキも見てあげてください。

●最終回
さわ子と梓です。というか、全部です!

———ファンの方にメッセージをお願いします。
こんなにたくさんの人たちに愛されて、「けいおん!」は本当に幸せな作品だなぁとしみじみ思う今日この頃です。唯たちが楽しく過ごす姿が少しでも皆様の元気に繋がっていれば、とても嬉しく思います。ありがとうございました。

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Pub: 19 Oct 2023 23:28 UTC
Edit: 19 Oct 2023 23:31 UTC
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